2月20日、予算委員会第五分科会(厚生労働省)にて、以下の項目につき質疑を行いました。
1.かかりつけ医機能の制度化について
2.マイナンバーカードの保険証利用について
(1)オンライン資格確認の義務化について
(2)公的医療費助成の受給者証の取扱について
3.創薬力の強化と医薬品の安定供給について
4.プログラム医療機器の導入促進について
5.こども予算について
(1)家庭向けサービスの充実及び保育の質向上について
(2)こども予算倍増における地方財源について
6.生活衛生営業への支援について
質疑の概要を勝目事務所においてまとめました。長文につき恐縮ですが掲載いたします。なお、正確なやりとりについては、議事録をご覧下さい。
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1.かかりつけ医機能の制度化について
【勝目】
2月10日、全世代型社会保障改革法案が閣議決定された。この中に、かかりつけ医機能の制度化が盛り込まれている。
かかりつけ医制度については、昨年5月の財政審建議において、かかりつけ医の認定や、患者の事前登録などがうたわれ、現場に大変な不安が広がった。今回の法案におけるかかりつけ医機能の制度化は、財政審建議の内容と何が異なるのか。
また、かかりつけ医機能そのものは、今後の地域医療において強化すべきと考えるが、どういう方向性を志向するか、ご教示いただきたい。
【加藤厚労大臣】
昨年5月の財政審の建議では、かかりつけ医機能の要件を法制化、明確化し、要件を備えた医療機関をかかりつけ医として認定する制度の新設や、患者、国民に対して受診を希望するかかりつけ医の事前登録を促す仕組みの導入などについて言及された。
国民、患者目線に立って、必要なときに迅速に必要な医療を受けられるフリーアクセスの考え方の下、地域の医療機関が、地域の実情や、その機能や専門性に応じて連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮するよう促すことが重要。
こうした観点から、国民、患者がそのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるよう情報提供を強化、また、医療機関に対してその機能の報告を求め、都道府県が確認、公表し、これらを踏まえて、地域の関係者との協議の場で必要な機能を確保する具体的な方策を検討し、公表する。こうした内容の医療法の改正案を今国会に提出した。
したがって、今回の法案には、かかりつけ医として認定する制度や、かかりつけ医の事前登録は盛り込まれていない。法案が成立すれば、今申し上げた考え方にのっとって制度整備を着実に進めていきたい。
【勝目】
答弁にあった「確認」の法的性質、事実上「認定」と同じではないかという不安もいっときあったが、そうではないということだった。この点も含め、詰めた議論を法案審議でやっていきたい。
これからの高齢社会にあって、質の高い地域医療を低廉でそして安定的かつ持続的に提供していくことは皆の願い。医療現場が引き続き高いモチベーションを持って取り組めるよう、制度の設計と運用をよろしくお願いしたい。
2.マイナンバーカード(MNC)の保険証利用について
(1)オンライン資格確認の義務化について
【勝目】
先週金曜日(17日)に、MNCの保険証利用に係る検討会の中間とりまとめが示された。現行の保険証を廃止するということが先に前面に出過ぎたために、大変な懸念と不安を呼んでしまったが、マイナンバーカードの利用には大きなメリットがある中で、御理解をいただくことが大事。
この中間とりまとめの中で、MNCを保有していない方に対しては、無償で資格確認書を交付するということが盛り込まれた。これは適切な判断と考える。
他方で、医療機関の側は、オンラインによる資格確認を行う体制を取ることがこの4月に義務化されている。高齢の医師の中には、であればもう続けられないという方もおられるが、こうしたことが起こらないよう、どのような策を講じるのか。
【保険局長】
オンライン資格確認については、昨年8月の中医協の答申に基づき、本年4月から全国の保険医療機関、薬局での導入を原則義務化した。
こうした中で、高齢の医師などは導入が困難ではないかという指摘もあり、昨年12月の中医協においては、地域医療に支障が生じるなどやむを得ない場合の必要な対応として、高齢の医師等がレセプト取扱件数が少ない場合なども含め、やむを得ない事情がある場合には、導入義務の経過措置を設けるとともに、導入支援のための財政措置の期限も延長するなど配慮措置を行っている。
療養担当規則については4月以降義務化されているが、この違反は保険医療機関等の指定の取消しとなり得る。しかし、違反している場合においても、直ちに指定取消しとなるものではなく、まずは地方厚生局による懇切丁寧な指導などが行われることとなり、具体的には個別事案ごとに適宜判断していくとの対応を考えている。
医療DXの基盤となるオンライン資格確認の様々なメリットを患者、国民の皆様に少しでも早く実感いただけるよう、医療現場やシステム改修を行う事業者に御理解いただき、円滑な導入に努めたい。
【勝目】
マイナンバーカードの保険証利用のメリットをしっかりと円滑に実装していくためにも、無用にハードランディングをして反発を招くということがないように御配慮をお願いしたい。
(2)公的医療費助成の受給者証の取扱について
【勝目】
保険証にいわば隣接するものとして、各自治体が行っている子供の医療費助成や、国の場合は難病の公費助成など、国、自治体とも公費による医療費の助成に係る受給者証がある。現在は紙であるが、患者目線としては、これらも含めMNC1枚で完結したらより利便性が増す面もあるのではないかと考えるが、対応方針はどうか。
【政策統括官】
公費負担医療の受給者証とMNCの一体化を求める当事者などからのご意見を承知しており、それにより国民や医療現場にとってのメリットの実感が大きくなると考えている。
また、検討会中間とりまとめにおいても、MNCにおけるオンライン資格確認は、今後の医療DXの基盤となる仕組みであり、将来的には、診察券や公費負担医療の受給者証もMNCと一体化していくことにより、ますます国民や医療現場にとってのメリットの実感が大きくなると考えられる、と指摘されている。デジタル庁とも連携し、医療DXの取組の中で、公費負担医療の受給者証とMNCの一体化の実現を図っていきたい。
他方で、小児医療証など、地方自治体が単独で実施している医療給付事業の医療証等については、自治体それぞれ実施されていることから、直ちに一体化することは難しい側面もあるが、まずはどのような課題があるかを整理したい。
【勝目】 こども医療費助成は確かに自治体の独自事務であるが、ほとんどの市町村が実施しており、内容は(自治体間で)全然異なるが、事実上共通的な事務である。そうした中で、子育て環境を整えていくという観点からも是非検討していただければと考える。これは医療DXでの検討ということなので、党の方でもしっかり揉んでいきたい。
3.創薬力の強化と医薬品の安定供給について
【勝目】
現在、日本の医薬品は、コロナへの対応が要因としては大きいが、4.6兆円の輸入超過、貿易赤字になっている。デジタル分野についても4.7兆円の赤字で、これからの成長分野二つで国富が10兆円近く流出している状況であり、危機感を持っている。
この間、創薬力の低下とともに、日本の医薬品市場としての魅力が下がっており、上市される医薬品の内外の格差、いわゆるドラッグラグの拡大も指摘されている。
また、薬価の毎年改定もあって、医薬品業界がデフレ産業化しているのではないか、ジェネリック医薬品の供給も滞りつつあるのではないか。供給を担う卸や地域の薬剤師など医薬品産業のエコシステム全体に負荷が今かかっている状況であり、原薬の特定国への依存も課題。
これらの課題に対して、厚労省としてどういう問題意識を持って、どう対応するのか。
【医薬産業振興・医療情報審議官】
まず、創薬力の強化について、創薬技術が高度化する中において、革新的創薬については、世界的にも特定領域に特化した技術を有するベンチャー企業の存在感が増している。我が国においても、創薬力強化のためには、ベンチャー企業の支援が重要。
このために、政府としては、スタートアップを対象とした相談窓口、MEDISOを設置し、研究開発から実用化に至るまでの総合的な支援を提供するとともに、経済産業省の創薬ベンチャーエコシステム強化事業において創薬ベンチャーに対する資金援助を行うこと等により、成功事例の創出に向けた支援を行っている。
また、医薬品の安定供給については、大きく分けて、重要な医薬品のサプライチェーンの強靱化を図る経済安全保障上の問題と、後発医薬品メーカーの薬機法違反を契機とした供給量の低下、新型コロナウイルス感染拡大による需要の増加による供給不足の問題がある。
経済安全保障の観点からは、経済安全保障推進法の枠組みにおいて、抗菌性物質製剤を特定重要物資に指定し、安定供給に向けた取組を進めている。このほか、外部依存性が高くなっている医薬品に係る備蓄などの取組についても、支援している。
また、後発医薬品を中心とした供給不足については、医薬品卸売の事業者や薬局の通常業務にも支障が及んでいる状況。業界団体を通じ、後発品を含む全ての医薬品につき、欠品が生じたものやその代替品について供給状況を把握をした上で、供給量が十分な製品については、製薬企業に対しまして、限定出荷の解除を求めるとともに、医療関係者に対しては、これらの製品の供給状況を取りまとめて公表して、安定供給に取り組んできた。
こうした創薬力の強化、医薬品の安定供給について、現在、医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会において議論いただいているところ。この取りまとめを踏まえ、検討を進めてまいりたい。
【勝目】
まさに、研究開発の体制から、それをいかに産業化につなぐか、薬事の規制の問題、薬価の水準の問題、市場としての魅力の問題、そして経済安全保障の問題。「医療安全保障」と一つの分野として打ち立てて、それほどの危機感で取り組んでいかないといけない。有識者の検討会と並行して、党の方でもPTや議連を通じ、議論を積み重ね、ともに取り組みたい。
4.プログラム医療機器の導入促進について
【勝目】
デジタル技術の発展に合わせ、プログラム医療機器の開発、導入を適切に促し、そして、医療の効率化・高度化に資する仕組みの構築が求められている。この間、厚生労働省としても、事業者の声を聞かれながら、例えばソフトウェアのアップデートに係る事前届出制度など様々な見直しに取り組んできたものと承知。
プログラム医療機器の導入促進に向けて、薬機法上の手続、あるいは診療報酬上の取扱いも含め、どのように対応していくのか。
【医薬・生活衛生局長】
まず、プログラム医療機器の薬事承認制度について業界団体から話を伺うと、一定の性能や有効性が確保されていることをもって第一段階目の承認を行い、社会に実装しながら臨床的な有用性を確立した後に
第二段階目の承認を行う、段階的な薬事承認の仕組みというものが活用できないか、という要望があると承知。
厚生労働省としては、どのような段階的承認の仕組みが可能か、プログラム医療機器の特性を踏まえた薬事承認制度の運用改善検討事業を立ち上げ、具体的な事例に基づいて検討している。
また、プログラム医療機器の診療報酬上の対応については、令和4年度の診療報酬改定において、プログラム医療機器を使用した場合の評価の位置づけを明確化した。
柔軟な保険収載等を求める業界の要望もある。こうした中で、今般新たに、中央社会保険医療協議会の下に、プログラム医療機器等の評価の在り方等に係る検討を行うためのワーキンググループを設置することとした。
今後、プログラム医療機器の特性に応じた評価の在り方について、令和6年度改定に向けて、業界団体の意見も伺いながら検討していく。
【勝目】
令和6年度改定は、医師の働き方改革、薬価も随分議論がある。そうした中で、プログラム医療機器についても、ワーキンググループの議論もしっかり深めていただき、成長分野、産業政策としても重要だと考えているので、一層の取組をお願いしたい。
5.こども予算について
(1)家庭向けサービスの充実及び保育の質向上について
岸田総理が小倉大臣に指示をされた三本柱、経済的支援の強化、幼児教育・保育の質・量の強化及び家庭支援の充実、働き方改革、これは三つそろって初めて効果が出てくる、お金だけでは解決しない問題。
特に、保育の質・量の充実、家庭への対人サービスの強化については、例えば先の通常国会で児童福祉法が改正されたが、これも、人材の育成・確保・配置、拠点の設置、そして現場の質の向上など、一朝一夕にはいかない重い課題。
保育の充実に関しても、四歳児の配置基準は七十年変わっていない。今の保育ニーズに全く合っておらず、何とかしてほしい、保育園側も親の側も、切実な声がこの間ずっと聞こえている。病児保育は予算事業であるため、体制・処遇の面で課題がある。
この二点について、次元の異なる少子化対策という中で、どのように取り組まれるのか。
【子ども家庭局長】
子育て世帯の支援に当たっては、現金給付のみならず、保育の充実や子育て家庭への支援サービスを総合的に進めることが重要。
例えば、令和6年度に施行される改正児童福祉法においては、虐待の発生を未然に予防するための支援の強化として、全ての妊産婦、子育て家庭、こどもへ一体的に相談支援を行うこども家庭センターの設置や、訪問家事支援の創設などによる子育て家庭への支援の充実などを盛り込んでおり、改正法の施行に向け、今年度は調査研究等を通じて地方自治体や有識者から意見を伺いながら具体的な検討を行っているところ。引き続き、令和6年度の施行に向け、必要な予算の確保にも努めていく。
保育士の配置改善、質の改善も重要な課題。これまでも累次の改善を行ってきたが、いわゆる0.3兆円超の質の向上事項に含まれる、一歳児、四、五歳児に対する職員の配置改善は未実施となっており、引き続き安定的な財源の確保と併せて検討が必要。
また、病児保育については、予算事業として実施しており、利用児童数の変動が大きいことから、安定的な運営を確保することが課題。令和5年度予算案においては、当日キャンセルに対する受入れ体制を維持していることを一定程度評価をするための加算を試行的に実施する。
小倉こども政策担当大臣の下、こども、子育て政策として充実する内容を三月末までを目途に具体化をし、六月の骨太方針までに将来的なこども、子育て予算倍増に向けた大枠を提示するものと承知をしており、厚生労働省の立場からも、必要な連携、協力を行ってまいりたい。
【勝目】
配置の関係は、まさに0.3兆円問題をしっかり解決しないと進まない。病児保育は一定の前進はあるが、園側で体制を組んで初めて利用ができるわけであって、その利用実績に応じてとなると現場としては難しい。
(2)こども予算倍増における地方財源について
【勝目】
こうした保育や対人サービスは地方で行われる。予算倍増の議論の中で、地方が動かないと現実は変わらない。
国としてきっちり地方費についてもその財源を保障し、国の責任で対応していくことが必要であるが、こども予算倍増の中の地方費の取扱いはどうするのか。
【子ども家庭局長】
こども施策の具体的な実施を中心的に担っているのは地方自治体。国が地方自治体の取組状況を把握をし、取組を促進するための必要な支援を行うとともに、現場のニーズを踏まえた地方自治体の先進的な取組を横展開をしまして、必要に応じて制度化をしていくことは非常に重要。
こども施策に関しては、地方自治体との連携を強化するため、4月に発足するこども家庭庁において、国と地方との定期的な協議の場を設けることとしているが、これに先立ち、1月24日に準備会合を開催し、地方三団体の幹部の皆様方と意見交換をした。
小倉こども政策担当大臣の下で幅広く議論を進め、地方団体の皆さんも含めて様々な意見を聞きながら、こども、子育て政策の充実の内容を具体化していきたい。
【勝目】
三団体の意見をよく聞いていただき、財源の話は出なかったが、必ず議論の俎上に上るテーマなので、併せてしっかり御検討いただきたい。
6.生活衛生営業への支援について
三年に及ぶコロナ禍、エネルギーコストの高騰ということもあり、非常に厳しい経営環境の下で、飲食、旅館、ホテル、そしてまた理容、美容、クリーニングなど生活衛生営業は、営業の自粛を余儀なくされ、あるいは逆にエッセンシャルワーカーとして細心の注意を払いながら営業を継続してきたなど、甚大な影響を被ってきた。
コロナ禍対応のためのゼロゼロ融資の返済も到来してくるわけだが、この厳しい状況にあって、まず、生衛業を所管する厚労省としてどのように支援する、それはすなわち国民生活を守ることにほかならないので、その方針について伺いたい。
また、生衛業のような中小零細企業からのゼロゼロ融資返済の相談には柔軟に対応するようにということで、行政から金融機関には何度も要請をしていただいているが、現場では融資態度が厳しいとの話も仄聞するところ。
政府としての対応を併せてお聞かせいただきたい。
【生活衛生・食品安全審議官】
生活衛生営業者は、国民生活に密接に関わるサービスを提供し、地域経済、雇用の基盤。しかしながら、新型コロナウイルス感染症や物価高騰等により厳しい経営状況にあるものと認識。
このため、厚生労働省としては、経営状況の改善が図られるよう、まず、日本政策金融公庫による低利融資を行うとともに、同公庫に対して返済期間や据置期間の延長等を含め、事業者の実情に応じた柔軟な対応を行うよう要請。
また、継続的な集客等につながるイベントやキャンペーン等への支援のほか、補助金や税制措置の活用等に関する専門家による相談支援、さらにはデジタル化の推進等にも取り組んでいる。今委員御指摘のあった民間ゼロゼロ融資の返済本格化に向けて、政府全体として対応を強化している。
引き続き、厚生労働省としても、関係省庁や関係団体と連携し、生活衛生関係営業者の振興や集客力、収益力の向上等を支援してまいりたい。
【金融庁総合政策局参事官】
宿泊や飲食といった事業者の方々が大変な状況にあることについては、金融庁も認識を一にしている。こうした中、政府としては、民間のゼロゼロ融資の返済が本格化してくるので、先般、1月10日から、借換え需要に加えて新たな資金需要にも対応する新しい保証制度の運用を開始している。
また、金融庁においては、民間の金融機関に対して、既往の債務の条件変更や、借換え対応を含めて、引き続き事業者の立場に立った最大限柔軟な資金繰り支援を行うこと、さらに、飲食業、宿泊業等の新型コロナの影響を特に受けている事業者の方々に対しては、より一層のきめ細やかな資金繰り支援を徹底することを累次にわたり要請してきたし、これからも要請していく。
金融庁としては、引き続き、資金繰り支援に万全を期すよう金融機関に要請するとともに、その取組状況をしっかりと確認をして、事業者に寄り添った丁寧かつきめ細かな支援を促してまいりたい。
【勝目】
累次にわたって金融機関に御指導をいただいている、私も、何度もそういう報告を承っている。
現場の声をこれからもきめ細かく受け止めていただいて、必要な対応を引き続き取っていただけきたい。

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