3月22日、厚生労働委員会にて質問に立ちました。質問項目は以下のとおりです。 1.人生百年時代の健康づくりについて (1)こどもの健康について (2)健康経営について (3)いわゆるメディカル・フィットネスについて (4)女性の健康について (5)健診データの一気通貫化について 2.障害児支援について
(1)改正児童福祉法の施行準備について
(2)新しい知見を現場実践に活かす仕組みについて
質疑の概要を勝目康事務所においてまとめました。長文につき恐縮ですが掲載いたします。なお、正確なやりとりについては、議事録をご覧下さい。
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1.人生百年時代の健康づくりについて 【勝目】
人生百年時代にあって、健康寿命をいかに伸ばしていくか。
一人一人のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上、医療費負担の軽減、限りある医療資源の有効活用、さらに今日的には、ビジネス面でのイノベーション等の視点で極めて重要なテーマである。ライフステージに応じた健康づくり対策の充実を、という観点で順次質問していく。
(1)こどもの健康について
コロナ禍において、子供たちは肥満傾向にある一方で、痩せ過ぎの問題もある。肥満や痩身に対しては、まず、学校における健康教育を通じて子供たちが適切な知識を学ぶことが大事なのは言うまでもないが、併せて実際の行動につながっていく取組が不可欠。政府の取組・方針を伺いたい。
【文部科学省審議官】
児童生徒の痩せや肥満は重要な課題であり、学校においては、学習指導要領に基づき、児童生徒の発達段階に応じて指導することとしている。
例えば、中学校では、保健体育科において、生活習慣病などは、適切な運動、食事、休養及び睡眠の調和の取れた生活を実践することによって予防できることを指導している。その際、不適切な生活行動を若い年代から続けることによって、生活習慣病のリスクが高まることなどが学習されている。
こうした学習を行う際には、積極的な心身の健康の保持増進を図っていく資質、能力を身につけられるよう、主体的、対話的で深い学びの視点から授業改善に取り組むこととしている。児童生徒が自分事としてしっかり捉え、健康の保持増進に関する指導が充実していくよう引き続き取り組んでいく。
【勝目】
教育現場で知識を更に主体的に適用できるようにするのは大事なこと。さらにこの世代は、SNSを通じて真偽不明なものも含めて様々な情報に接する世代であり、リテラシーの向上と併せて、自身の体と健康について、教え込まれるのではなく、自ら興味を抱いて行動していく、ナッジ的な取組も含めて御工夫を是非お願いしたい。
特に、肥満に関しては、外での運動の機会を確保することも重要。昨今、住民の苦情によって子供の外遊びの場を確保することも容易でないが、今、子供たちの体に何が起こっているのかを直視すると、やはり外遊びの機会をつくることも私たち大人の責任。
加えて、一定時間屋外で活動することは、日光のバイオレットライトによる近視抑制効果も注目されており、熱中症や脱水など留意しつつ、積極的に外遊びの推奨も図るべき。政府としてどのように取り組むのか。
【こども家庭庁設立準備室次長】
外遊びについては、強く健康な体の育成や健全な心の育成といった子供たちの健全な成長に極めて重要な役割を担うとともに、社会で活躍するのに必要となる能力の育成にも大きく寄与する。
また、一昨年末に閣議決定したこども政策の新たな推進体制に関する基本方針においても、今後の子供政策の基本理念として、全ての子供が、安全で安心して過ごせる多くの居場所を持ちながら、様々な学びや、多様な体験活動、外遊びの機会に接することができることが重要であるとしており、こども家庭庁において、外遊びも含めた子供の居場所づくりにしっかりと取り組んでいく。
【勝目】
居場所づくり、外遊びを含めてしっかり取り組むと心意気を示していただいた。是非頑張っていただきたい。これは、地方を巻き込まないと絵に描いた餅になるので、地方公共団体との連携をしっかり図っていただきたい。
続いて、学校健診について。学校健診は、子供たちの健康を守るために我が国が誇る保健システムであるが、他方で、健診項目としてかねて要望の強い採血が対象でない、あるいは、フォーマットが地域、学校によってバラバラ、との課題も聞く。学校健診もパーソナル・ヘルス・レコードの一環なので、その構築に向けて、健診記録様式の標準化やデータ連携を進めるとともに、地域レベル、国レベル、いずれにおいても、医師を始め医療関係者との連携強化に取り組むべきだと考えるがどうか。
【文科省審議官】
学校においては、学校保健安全法により、児童生徒等の定期の健康診断を行ったときは、健康診断票を作成しなければならない。その様式については、各設置者において適切に定めることになっているが、全国的にある程度共通性が保たれ、また、児童生徒等が転学等をした場合においても保健指導の一貫性を確保することができるよう、日本学校保健会を通じ、標準的な様式参考例を示している。
また、現在、政府では、生涯にわたる個人の健康情報をマイナポータルを用いて電子記録として本人や家族が正確に把握、活用するための仕組みであるPHRの構築を進めているところ。このため、学校健康診断についても、今年度、仕組みの構築に向けて実証事業を実施するとともに、現在、診断結果のデータの内容の規格をそろえる取組として、データ標準の作成を進めているところ。
こうした取組を進めるため、文部科学省において は、厚生労働省等の関係省庁のほか、日本医師会や日本学校歯科医会等の関係団体と連携するとともに、各地域、学校における地域の医師会や学校医等との連携を促し、児童生徒等の健康の保持、増進が図られるよう努めていく。
【勝目】
いずれもしっかり取り組んでいただきたい。
(2)健康経営について
【勝目】
卒業・就職後の健康確保には、従業員の健康に対する事業所の理解と具体的な取組が不可欠。
この点、経済産業省は、これまで十年近く健康経営の推進に取り組んできた。先日、人への投資に積極的に取り組んでいるある企業を訪問したら、真っ先に、ホワイト500の認定を受けた、との話を先方から持ち出され、認知度も高まっていると感じている。健康経営について、これまでの成果、今後の方向性についてお伺いしたい。
【経済産業省商務サービス審議官】
経済産業省では、9年前の2014年度から健康経営銘柄を、それから2016年度からは健康経営優良法人認定制度を始めており、こちらを通じ、健康経営を適切に実践する法人の認定を行っている。
本年度は、大規模法人部門が、前年度から約400社増え、2,676社、中小規模の法人部門では、1,500社増え、1万4千社を超え、毎年増加。また、各部門の上位500法人については、健康経営を牽引する存在として、ホワイト500、ブライト500を認定。認定企業からは、採用や投資における効果が出ているとの声もいただくなど、その重要性を実感。
一方で、中小企業については、健康経営という取組自体の認知度に課題。このため、経産省としても、これから取り組もうとする中小企業へのサポートを強化していく。具体的には、インセンティブの強化として、今年から、ものづくり補助金などの中小企業向けの各補助金の審査における加点をする、それから、日本政策金融公庫の企業活力強化貸付けにおける金利優遇などの支援策を用意。また、ノウハウの提供という観点からは、例えば、東京商工会議所などは、健康経営アドバイザーの資格制度を整備して、中小企業に派遣をするといった取組も進めている。
今後も、こうした支援策の強化を図るとともに、中小企業への広報に取り組み、健康経営の一層の普及を進めていく。
【勝目】
これは、大企業においては、健保組合の意義の問い直し、再活性化につながり、中小企業においては、協会けんぽと組んで、ホワイト500、ブライト500等に認定さる企業さんもたくさんあり、健康経営が更に広がればと願っている。
(3)いわゆるメディカル・フィットネスについて
【勝目】
予防医療と未病対策の一つとして、医療と運動が連携する、いわゆるメディカルフィットネスについて伺う。一定の基準を満たした運動型健康増進施設は、指定運動療法施設として医療費控除の対象となる。施設の継続的な利用を通じた健康増進効果の発揮も期待されるが、知名度はもう一つ。健康増進施設制度の普及促進についてどのように取り組むのか。
【健康局長】
健康増進施設や指定運動療法施設の普及を図るため、昨年4月から、健康増進施設の面積要件を緩和するとともに、指定運動療法施設の指定要件のうち、医師の処方に基づく運動療法を実施する際の一回当たり施設利用料金の上限を引き上げるといった要件緩和を行っている。これにより、対象となる施設が増える。
また、現在、健康増進施設の認定基準として、運動指導を行う者については常時配置することを求めているが、近年24時間営業のフィットネス施設が増加していることも踏まえ、この常時配置の考え方を明確化し、健康増進施設として営業する時間帯については運動指導を行う者を配置すること、当該時間帯を施設利用者へ分かりやすく周知することを施設に求める方向で検討している。
こうした取組により、健康増進施設の更なる普及を図る。
【勝目】
検討を速やかに進め、この制度がより普及して健康増進に資するよう、お取組をお願いしたい。
(4)女性の健康について
【勝目】
女性活躍の時代だからこそ、これまで以上に女性の仕事と健康の両立を支えていかなければならない。これは検討すべき項目が極めて多岐にわたり、包括的な枠組みや支援体制の構築も含め大きなテーマであるが、今日は一点、乳がん検診について伺う。
乳がんというのは、ステージ1、2で発見できれば生存率が非常に高い疾病であり、検診の意義も大きく、早期発見、早期治療が非常に効果を発揮する。しかし、実際の検診受診率は、概ね4割から5割程度と少ない傾向。
現在推奨されている検査方法というのはマンモグラフィーであるが、課題として、痛い、それから若年女性の場合は、いわゆるデンスブレスト、高濃度乳腺によってがん細胞を発見しにくい、擬陽性が多い、などがある。そこで、これらの課題を克服するために、超音波検診、エコーによる乳がん検診も位置づけられないかという声も伺うが、厚労省のお考えを聞かせてほしい。
【健康局長】
乳がん検診については、現時点では、死亡率減少効果等が確認された科学的根拠に基づく検診方法としては、問診及びマンモグラフィーが、がん検診実施のための指針に定められている。
乳房超音波検査については、40代の女性の乳がん検診において、マンモグラフィーと超音波検査の併用が有効かどうかを検証するJ-STARTを実施中であり、健康で無症状な集団においてマンモグラフィーと超音波を併用した場合に、マンモグラフィー単独検査に比べて乳がんの発見率が高まることが明らかとなっている。
一方で、この研究は、検診受診者のフォローアップ期間内にあり、マンモグラフィーと超音波検査の併用が乳がんの死亡率を減少させるかどうか等については、現時点では明らかでない。
今後、研究結果も踏まえながら、超音波検査などの新たな検査について、乳がん検診の受診率の向上に資するかという点も総合的に勘案し、対策型検診として位置づけることについて検討したい。
【勝目】
今まさに研究、検証の途上で、時間もかかるという話も聞いているが、受診率向上に資するかという観点も非常に大事。一日も早く選択肢が増えることを期待し、引き続き注視したい。
(5)健診データの一気通貫化について
【勝目】
現在、健診データはライフステージの段階ごとに分散的に把握をされている。母子保健、学校保健、特定健診は各保険者、後期高齢とばらばら。これらのデータを一気通貫化して、生涯を通じた保健に取り組むべき、こういう声が医療関係者からも上がっているが、現在、電子カルテの標準化等医療DXに政府を挙げて取り組んでいるが、ここでの位置づけを含め、生涯を通じた健診データの一気通貫化に係る方針について伺たい。
【加藤厚生労働大臣】
国民それぞれの皆さんが自ら予防・健康づくりを進めていくために、御自身の健診情報などを一気通貫で閲覧し、健康管理などに利用できる環境を整備することは大変重要であるとの指摘はまさにそのとおり。
令和3年6月から、厚労省でデータヘルス改革に関する工程表に基づき、自身の保健医療情報を閲覧・活用できる仕組みとして、PHR、パーソナル・ヘルス・レコードの利活用を推進をし、具体的には、乳幼児健診、学校健診、事業主健診等の各ライフステージにおけるデータについて、順次、マイナポータルにおいてワンストップで閲覧できる環境整備を進めているところ。これにより、生涯にわたって御自身の健康状態を経時的に把握し、生活習慣の改善や医療機関における医師等との相談の際にも是非利用していただきたい。今、逐次進めている最中ということであります。
その中で、現在、委員から御指摘がありました全国医療情報プラットフォームの創設等に向けて取組の具体化を進め、オンライン資格確認等のシステムのネットワークを拡充する、まさに医療DXをこの春を目途としてその工程表の作成をしているところであるが、その中に、今、冒頭申し上げたデータヘルス改革に関する工程表も取り込み、PHRの更なる推進を目指していきたい。
今後とも、生涯を通じて国民のお一人お一人が健康管理や良質な医療の提供が切れ目なく行われるよう、前に進めていきたい。
【勝目】
大臣のリーダーシップで、適切に、しっかりと取り組んでいただきたい。
2.障害児支援について
(1)改正児童福祉法の施行準備について
【勝目】
昨年の通常国会で児童福祉法が改正された。内容は多岐にわたるが、この中で障害児支援については、児童発達支援センターを中核として地域の体制を強化していくという内容と承知。そこで、改正法の施行準備がどこまで進んでいるか、お伺いしたい。
児童発達支援センターは、特に全国的に標準形があるわけではなく、地域により、数あるいは機能にばらつきがある。こうした現状を踏まえ、令和5年度は法が施行される令和6年度に向けたセットアップの大事な時期だと考えるが、地方公共団体に対してどういう取組を促して、令和6年度以降必要となる組織や人員、設備等の体制について、どういうスケジュールで検討し、地方自治体に伝えるのか。
【障害福祉保健部長】
令和5年度は、児童発達支援センターの機能強化等を内容とする児童福祉法改正の施行に向けた準備期間であると同時に、令和6年度から令和8年度までの次期障害福祉計画の期間に向けて、自治体が地域のニーズや資源の現状を把握し、地域の支援体制の整備の方針と具体的な計画を定める期間。
厚生労働省では、令和6年度以降、児童発達支援センターの事業が円滑に展開されるよう、改正法の施行に向け、障害児通所支援に関する検討会を開催し、児童発達支援センターが果たすべき機能の具体的な内容、地域の体制整備の在り方・進め方について御意見をいただくとともに、令和6年度障害児福祉計画に係る国の基本指針について検討を進め、各市町村等において児童発達支援センターを中核とした重層的な支援体制の構築を目指すことなどを方向性として盛り込む指針を、5年度初めにも示す方向で検討を進めている。
これらを踏まえ、今後、各自治体において障害児支援計画の体制整備について検討いただき、次期障害児支援計画の策定を進めていただくことになるが、今後、国においても、令和5年度において児童発達支援センターの具体的な基準や報酬について検討を進めるとともに、手引書やスタートアップマニュアルの策定などを進めることとしている。
このスタートアップマニュアルについては、今後一年程度かけて検討していくこととなるが、その過程においても、適宜、自治体等に丁寧に説明をし、令和5年度中から、令和6年度の施行に向けて連携を進めていきたい。
【勝目】
施行当初からしっかり自治体が動けるようにコミュニケーションを密に取っていただきたい。
(2)新しい知見を現場実践に活かす仕組みについて
【勝目】
この改正法においては、このセンター等によるスーパーバイズあるいは研修を通じた民間の事業所の質の確保が想定されている。その際に何を教え学ぶのかという中身が問われる。現在、医療や心理学など、各分野で療育に関する研究が進んできているが、こうしたところでの新たな知見を現場にどのように反映させていくのかが重要。厚労省さんの取組を伺いたい。
【障害保健福祉部長】
障害児支援の質の確保は大変重要であり、これまで厚生労働省においても、質の担保をすることを目的に、児童発達支援において提供すべき支援内容等を示したガイドラインを策定し、外部研修への参加の必要性等について示してきたところ。
また、令和4年度、障害児通所支援における質の確保に資する調査研究を行い、質のよい支援の具体像や、それを実現する上で児童発達支援事業所の職員等が研修等において学ぶべき内容について、実態調査も踏まえて整理を進めているところ。
今年度、厚生労働省で開催した障害児通所支援に関する検討会においては、令和6年度以降、スーパーバイズを担うこととなる児童発達支援センター自身も積極的に専門機関等々から助言を受けることなどで専門性の向上を図ることが重要であることや、人材育成の観点から基礎研修を始めとする研修体系の構築を進めていくことが必要であるといった御意見もいただいている。
これらの調査研究の結果や検討会の御意見等も踏まえ、障害児支援の質の確保、向上に向けて取組を進めてまいりたい。
【勝目】
4月から障害児支援もこども家庭庁に移管をされるが、移管されて後退するなどということがないように、積極的にお取り組みをいただきたいということを最後に要望する。
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