5月19日、衆議院文部科学委員会にて質問に立ち、文化庁の京都移転及び教育人材の確保について政府の見解を質しました。
質疑の概要を勝目事務所においてまとめましたので、長文につき恐縮ですが、掲載いたします。なお、正確なやりとりについては、議事録をご覧下さい。
ーーー
【勝目】
1.文化庁の京都移転について
今週月曜日(5月15日)、文化庁が京都での業務を本格的に稼働させた。文化庁は去る3月27日に既に移転しているが、職員の皆さん大半の方はこの5月に異動され、今週から業務を始めたということである。
移転プロジェクトとしてはこれで一つの節目であるが、政策展開という意味ではむしろこれからがスタート。この文化庁の京都移転をどのように新たな文化政策に活かして繋げていくかが問われる。
記念式典では、総理からも明確に方針が示されたが、そのことも踏まえて、今後の文化政策の方向性、大臣の思いを伺いたい。
【永岡文部科学大臣】
本年3月、京都において新しい文化庁が業務を開始するのに先立ち岸田総理から話があった通り、今回の京都移転を契機として、京都に文化財の修理の拠点となるナショナルセンターとして国立文化財修理センターを整備するとともに、京町家の意匠や伝統的な町並みなど広く我が国の建築文化の価値を確立する取組を進め、食文化や文化観光をはじめ「伝統×創造」で新たな価値を生み出していく、広く世界にこれを発信するなど、新たな文化振興に取り組んでまいりたい。
このため、本年3月に閣議決定した第2期文化芸術推進基本計画に基づき、心豊かで活力ある社会を形成するため、文化芸術と経済の好循環の実現を目指し、ポストコロナの創造的な文化芸術活動、文化財の適正周期での修理を含む「文化財の匠プロジェクト」の推進など、文化資源の保存と活用、次代を担う子供たちの育成、多様性の尊重、グローバル展開、地方創生、デジタル技術の活用などの施策に重点的に取り組む。
この度の文化庁の京都移転を機に、我が国の新たな文化行政を一層推進することを通じ、文化芸術立国の実現に努めていく。
【勝目】
ポストコロナの時期、再びグローバルな時代がやってくる。そこで問われるのはアイデンティティ。日本に暮らす私達が大切にしてきたものを見つめ直し、そこから新しく日本ならではの価値を創造し、発信していく。これからの文化政策には、まさに大臣が述べられたとおり、こうしたことが求められる。
安倍総理の回顧録には、フランス大統領をベルサイユ宮殿を彷彿とさせる迎賓館でお迎えをし、ワーキングランチにフレンチを出したことについて、その微妙な心情を吐露される箇所があるが、文化庁移転の意義というのは、単なる地方への移転、地方創生にとどまるものではない。欧米キャッチアップ型の国づくりからより日本らしさを活かす、という日本の国づくりの根本にも関わってくると考えている。
私も地元議員として、京都の関係者とともに、むしろ京都のためだけの文化庁移転にならないよう役割を果たしていきたいと考えているので、末永くよろしくお願いしたい。
【勝目】
2.教育人材の確保について
公教育の質は、施設設備に依るところもあるが、何といってもその担い手である教員の質をどう確保するかにかかっている。私の息子も現在地元の公立小学校1年生で、先生方はやる気と情熱を持って子供たちに向き合っていただいていると感じている。
教員の質をこれからも持続的に確保していくために必要なことは4点ある。
まず第1に、教員の養成段階から、あるいは研修等の機会を通じて、福祉や心理などの専門性や、個別最適な学び、協働的な学びに必要なスキルを身につけて、学び続ける機会を提供する。
不登校や発達障害など、様々な悩みや生きづらさを抱えている子供たちにしっかりと寄り添って、他方で子供たちの持てる力を最大限に伸ばしていく、そのためには、昔とった杵柄で教壇に立つのではなくて、今日的に必要な知識を身につけた上で教員になって、そしてその後も成長していけるという仕組みの構築が大事。
第2に、可能な限り事務処理や、あるいは過剰不当な保護者からの要求への対応から解放して、教員でないとできない仕事に向き合える時間を増やしていく。
先般公表された勤務実態調査速報値では、若干改善されたとはいえまだ長時間労働があることが明らかになった。例えば私の地元京都市では、この4月からアプリを使った保護者との連絡システムを全ての小中支援学校に導入した。こういう校務DXのフル活用というのも大事になってくる。
保護者への対応についても、教員任せにするのではなくて、オール学校として、さらに必要に応じて教育委員会も関わっていく重層的な対応の仕組みが要る。
3点目は、きめ細かな配置によって、こどもたち一人一人にもっと関わっていけるようにする。
小学校の35人学級は現在実施の途上であり、この流れを着実に中学校の35人学級制に繋げていきたい。また通級による指導が必要な子供たちも増えており、その意味でも、きめ細かな配置、あるいはセンター機能といったものを持たせていく必要がある。
4点目は、教員という仕事の責任とそれを果たすための努力に見合う処遇をする。
この点、現行の教職調整額の水準は、果たして今のままでいいのだろうか、また、もっとそれぞれの頑張りに応じた給与体系にできないか、との問題意識がある。後ほど申し述べるが、この調整額については、党では10%増額という提言もさせていただいている。
教員の人材確保のためには、これら4点をつまみ食いにすることなく、全てパッケージで実施することが大事であるが、文科省としての考え方、方針を伺いたい。
【文科省総合教育政策局長】
1点目について、近年の学校教育を巡る様々な課題に対応するためには、教師1人1人の強みや専門性を高め、さらに多様な専門性を有する質の高い教職員集団を形成することが重要であり、この点昨年12月の中教審答申でも指摘されている。
このため文部科学省としては、心理や福祉、データ活用や語学力などの強みや専門性を身に付ける科目の履修との両立を可能とする柔軟な教職課程を特例的に開設できるよう、令和5年度に制度改正を行う予定。
また、喫緊の教育課題への対応や、個々の学校現場および教師のニーズに即したオンライン研修コンテンツを充実することに加え、優れた知識経験等を有する方を教師として学校現場に迎え入れるため、令和3年5月に特別免許状の授与に係る指針の改正を行いつつ、こうした外部人材向けの研修コンテンツの開発にも取り組んでいる。 引き続き、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の実現に向け、必要な改革に取り組んでまいりたいと。 【文科省初等中等教育局長】 働き方改革等の項目について、これまで文部科学省においては、教員業務支援員を初めとする支援スタッフの充実や、校務のデジタル化等の学校DXの推進等の学校における働き方改革、スクールロイヤーの配置など、保護者等からの過剰な苦情や不当な要求への対応に係る法務相談体制の構築支援、小学校における35人学級の計画的整備や、障害のある児童生徒への通級による指導等のために必要な教職員定数の改善などの指導体制の整備等の取り組みを進めてきた。 今後は、働き方改革や学校の指導運営体制の充実とあわせて、処遇の改善が重要であると考えており、これらを一体的に進めていきたい。 このため、中央教育審議会に対して、来週、質の高い教師の確保のための環境整備について諮問を行い、総合的に検討いただくことにこととしている。 【勝目】 両局長からご答弁をいただいたので、着実な実行を求めたいが、教育改革待ったなし。もう手ぬるい改善では間に合わない、こういう強い危機感がある。 党としては今週の火曜日、萩生田政調会長を委員長とする特命委員会において、多くの先輩議員の先生方のご尽力で、「令和の教育人材確保実現プラン」という政府に対する提言を取りまとめた。これは、先ほど私が申し上げた要素を全て含んでより広いパッケージで教員という仕事の魅力を高め、教育の質、未来の人づくりの基盤を作ろうというプランである。私も幹事として末席を汚していたが、有識者や現場の先生方、先輩議員の見識に触れ、大変勉強になった。 他方で先月の財政審でどんな議論があったかと言えば、少子化に伴う加配定数の合理化による財源を教員の勤務環境改善のため活用していく、という指摘がある。教育のあり方を議論するときに、こんなことから議論をスタートする国は他にない。党の提言においては、児童生徒の減少に伴い生じる財源の活用を大幅に超えるような既成の概念にとらわれない大胆な拡充を求めている。 また、スピード感を持って取り組むことが大変重要で、抜本的改革期間としても令和6年度からの3年間としている。 先ほどは、初中局長から、教員の確保、処遇改善を含めて、週明けにも中教審に諮問するとの答弁があったが、これもいつまでも議論・検討するのではなく、しっかり目標時期を定めて取り組んでいかないといけないと考えるが、大臣としての方針をお伺いしたい。 そもそも、この党の提言というのは、人づくりの1丁目1番地であり、最大の少子化対策だとの思い、本当に重要なものなので、これに対してどのような姿勢、方針で、骨太の方針、その先の概算要求に臨むのか、大臣のお考えを伺いたい。 【永岡文部科学大臣】 学校教育が上手くいくかいかないか、その成否は、やはり教師にかかっており、教職の魅力をしっかりと向上させ、優れた人材を確保していくことが重要。 中央教育審議会のスケジュールに関しては、現時点で方向性を示す時期が決まっているものではないが、今回の検討は様々な論点が総合的また複合的に関わることから、一定程度は時間を要するのではないかと考えている。 その上で、施策を迅速かつ着実に実施していくためには、審議の状況に応じ、場合によっては逐次取りまとめていただくことも含め、来年の春頃に方向性を示すことを一つの目途として検討を進めてまいりたい。 また、自民党において取りまとめられた令和の教育人材確保実現プランにおいては、学校における働き方改革の更なる加速化や教師の処遇改善、学校の指導運営体制の充実、優れた人材が教師を目指すための支援を一体的にパッケージとして推進するべきとするなど、重要なことが提言されていると承知をしており、文部科学省としても、しっかりと受け止めたい。 総理からは、勤務実態調査の速報値を踏まえて、骨太方針に方向性を示すことを目指す旨の答弁がなされているものと承知している。私としては、教育の質の向上に向けて必要な予算を確保しつつ、働き方改革、処遇の改善、そして学校の指導運営体制の充実というものを一体的に進めていきたいと考えている。これらが実現できますようにしっかりと努力をしていく。 【勝目】 私達も、国会・党の方でしっかりと後押しをしていくので、共に頑張っていきたい。
Comments