11月16日、消費者問題特別委員会にて質問に立ち、以下について河野大臣始め政府側の見解を質しました。
1.霊感商法等の悪質商法等による被害者の救済に係る制度改正について
2.地方の消費生活センターの質の確保・向上について
3.消費者ホットライン188について
4.PIO-NETの更改について
5.ステルスマーケティング規制について
概要は以下の通りです(勝目事務所にて作成。正確には議事録をご参照下さい。)。
1.霊感商法等の悪質商法等による被害者の救済に係る制度改正について
【勝目】 旧統一教会については、霊感商法、悪質献金、いわゆる宗教2世の問題、様々な指摘がある。凄惨な経験をされた被害者の救済、再発防止、宗教法人法上の適切な権限の執行をしっかりやってほしいというのが、国民が求めておられること。 他方で、法改正・新法制定となると、旧統一教会に対してのみならず、より広く、多くの方に適用され得る。このため、過度に広範な権限を行政権に与えることにならないか、あるいは憲法で保障されている信教の自由を本当に侵害することにつながらないか、などの論点についても、リーガルマインドを持って検討を行い、将来に予期せぬ禍根を残さないようにしないといけない。 大臣は、先の委員会において、被害の発生を予防し、救済を容易にするために必要な法制度の整備を行う旨述べた。岸田総理は、今国会に消費者契約法と国民生活センター法の改正案を提出予定で、最後の詰めを政府として行っている、と述べた。 現行法の課題についての認識はどうか。その課題にどう対応するのか。 また、消費者契約法の改正だけで、被害の予防、救済に関し十分とお考えか。
【河野大臣】
消費者庁の検討会では、取消権の要件が現在の消費者契約法では厳し過ぎる、俗に言うマインドコントロールの期間を考えると取消権の行使期間が短過ぎる、消費者契約法の対象外である寄附の被害、などの問題提起がなされている。取消権の対象拡大、その行使期間の延長、などを少しやっていかなければならないと思っている。 また、献金などの悪質な被害の救済という観点からの新法の検討も行っている。法律改正だけでなく、相談対応の充実、消費者教育の推進も併せて行い、被害者の救済、再発防止を行っていきたい。
【勝目】
まさに、今、河野大臣が述べられた課題は立法措置でないと対応できないものがある。また、現場の運用をしっかり改善していくことなど色々あると思う。
まずは、この立法措置について、政府で今行われている詰めの論議をしっかり行い、国民の皆様のご期待にお応えできる法整備をお願いしたい。河野大臣の突破力に期待するとともに、関係省庁が連携して、内閣としての総合的な対応をお願いしたい。
2.地方の消費生活センターの質の確保・向上について
【勝目】
消費者被害防止の最前線が相談業務。概ね80万〜100万件の相談が毎年寄せられている。相談業務の担い手は、主として地方の消費生活センター。したがって、地方のセンターの体制確保が消費者行政の肝であり、重要なのが、相談員・相談業務の質をいかに確保し、向上させていくか。
社会は大きく変化し、多様化している。悪質な商法から被害を防止するために、若年層にアプローチしないといけない。そのためにはデジタルの知見もデジタルツールでの対応も求められる。一方で、単身世帯の高齢者も増えており、認知症等の脆弱性を抱える高齢者への対応は、地域での見守りの力も借りる必要がある。このように、求められるアプローチも全然違う。
相談員の年齢構成は、4割が60歳以上。また、現時点でLINEでの相談の実施団体は3団体、メール相談を含めても200程度と聞いている。こうした現状を踏まえ、地方のセンターの体制について、特に質の確保・向上の観点から、現状と課題、今後の方向性をお伺いしたい。
【消費者庁】
消費者庁では、令和2年4月に地方消費者行政強化作戦2020を策定し、消費生活センターの設置や消費生活相談員の配置、レベルアップ、見守りネットワークの設置などを進めている。
消費生活センターの質の確保と向上については、地方消費者行政強化交付金や相談員の担い手確保事業などの国が直接行う事業、相談員向けの研修などを通じ、相談員の確保と質の向上など、地方公共団体への支援を行っている。
こうした取組に加え、本年4月にはSNS相談マニュアルを策定するなど、若者がアクセスしやすいように、SNS等を用いた相談受付手法の多様化にも取り組んでおり、デジタル時代に即した相談対応についても引き続きしっかり対応をしていく。
消費者がどこに住んでいても質の高い相談、救済を受けられるよう、高齢者、若者も含め、様々な世代のニーズに応えられるような地方消費者行政の質の確保、向上に向けて、今後とも取り組んでいきたい。
【勝目】
デジタルと高齢者は、今後、消費者行政が特に意を用いて対応しないといけない分野。国と地方と民間と、力を結集する必要がある。
とりわけ、デジタル時代にあっては、商取引は地方自治体の範囲をはるかに超えて行われるため、国の責任として、安心・安全な暮らしを支えていただく。また、地方の現場の声もよく聞いて、センターの質の確保と改善に取り組むことを強く要望したい。
3.消費者ホットライン188について
【勝目】
消費者ホットライン188、通称「いやや」は、当該区域を所管する地方消費生活センターにつながる仕組みであり、毎年おおむね30万件程度の利用があると聞いている。覚えやすい番号であり、何か問題に直面したときに支障なく相談する先につながるのは非常に大事なことである。
ただ、電話回線というのは、同時に通話しようとするとつながらない、通話料の負担の問題もある。先ほど、SNSによる相談の答弁をいただいたが、ネットの普及により、通信手段は、電話に全く限られない。こういう状況下、188について、現状と評価、また今後の方針についてお聞かせいただきたい。
【消費者庁】
消費者庁では、消費者トラブルで困ったときにすぐ相談できるよう、平成27年度から消費者ホットライン188を運用。様々なツールを用いて周知を行い、相談窓口の活用、促進を図っている。
令和3年度に188を経由して行われた消費生活相談件数は大体30万件であり、消費生活相談を活用しやすい環境の整備に一定の役割を果たしてきた。
ただ、その認知度については、名前と内容の双方を知っていた人は8.6%、名前を知っていた人と合わせると44.3%ということで、更なる認知度の向上は必要であり、あらゆる機会を捉えて、情報発信に努めたい。
また、消費者庁では、地方消費者行政強化交付金を通じて、電話以外の相談ツール、メールやSNSなどの相談ツールの多様化に向けても取り組んでいる。
そうした地方公共団体の支援などにも取り組み、全ての消費者が消費生活相談をより活用しやすくなるよう、しっかりと対応していきたい。
【勝目】
デジタル時代といっても、電話を中心に通信されている方がほとんどであるというのが世の実態。188の認知度向上を是非お願いしたい。
4.PIO-NETの更改について
【勝目】
消費者行政に関する情報の流通の機能を担うのが、いわゆるPIO-NET。1984年に運用が開始されて40年という長い歴史と伝統を誇るシステムであるが、パッチワーク的に更改を重ねるレガシーシステムに陥る危険がある。
今年、消費者庁と国民生活センターとで策定されたアクションプランでも、PIO-NETについては、システムが最適化されることなく重厚長大化した、と記載されている。
このアクションプランで示されている理想像は、画期的だと思うが、いざ実装しようとすると、過去蓄積されてきたデータの取り扱いや、現場を担う地方のセンターの対応力など、フィージビリティを詰めてから動かさないといけない。
尾﨑政務官は、デジタル庁の担当でもあり、高知県知事として地方行政のご経験もある。こうした状況の中で、PIO-NETの更改についてどういう方針で取り組まれるのか。
【尾﨑大臣政務官】
消費者庁では、本年6月に消費生活相談DXアクションプラン2022を策定し、デジタル技術を活用したPIO-NETのシステム面の刷新など、中長期的なデジタル化の検討を進めている。
現時点までの成果としては、地方消費者行政強化交付金などを活用し、メールやウェブフォーム、SNSなどによる相談受付手法の多様化に取り組む地方公共団体の支援を進めており、本年8月末時点で約200団体においてメール等による相談受付を実施。また、SNS相談の導入支援の一環として、本年3月にSNSによる消費生活相談対応マニュアルを作成し、これを地方公共団体にも共有した。
PIO-NETそのもののシステムの刷新も大変重要な課題である。消費者向けFAQや相談データの解析手法の開発、相談員向けオンラインマニュアルなど、アクションプランに記載されている項目の一部については先行的に整備を進め、順次実用化しつつ、PIO-NETの回線や端末、システム体系等の刷新に向けた取組を業務体制の整備と併せて進めている。
そして、地方公共団体における対応も非常に重要であり、システム面の対応や、相談機能の充実等が地方公共団体においても必要になる。地方の意見をよく聞きながら、地方消費者行政強化交付金などを活用して、的確に支援してまいりたい。
今後とも、消費者のことを第一に考える視点を軸に、相談員の働きやすさの向上なども進めながら、消費者被害の最小化に資するよう、しっかりとデジタル化を推進してまいりたい。
【勝目】
地方、現場の声をよく聞いていただいて、ただ、レガシーシステムの課題はしっかり乗り越えないといけないので、是非よろしくお願いしたい。
5.ステルスマーケティング規制について
【勝目】
デジタル社会にあっては、広告のあり方も変わってきている。今や誰もが発信者になれる時代。こういう中で、ステルスマーケティングが課題になっている。主要国の中で日本だけがステマ規制がないという指摘もあり、消費者庁も問題意識を持って、急ピッチで検討を進めていると承知しており、この検討会の中で、グローバル企業が日本だけステマをやったという例が示されている。
ステマ規制について、具体的にどのように制度化を図っていくのか。スケジュール感や検討会での論点等、方向性についてもご教示いただきたい。
【消費者庁】
消費者庁では、ステルスマーケティング、すなわち、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す行為について、景品表示法の観点からの対応を検討するため、本年9月から有識者による検討会を開催している。
検討会では、年内を目途に一定の結論を得られるよう精力的に議論いただいており、消費者庁としては、今後、検討会での結論が得られ次第、その結論を踏まえ、必要な対応を迅速に行っていく。
具体的な制度化については、まだ確たることは申し上げられないが、現行の景品表示法では、表示内容に有利誤認や優良誤認がない場合にはステルスマーケティングを規制できないというのが実情であり、検討会においては、景品表示法の規制が及ばないステルスマーケティングに対する規制の必要性や、景品表示法第5条第3号の告示への指定などの方向で議論が進んでいる。
【勝目】
これからも積極的な消費者行政の推進をよろしくお願いしたい。
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