11月16日、衆議院消費者問題特別委員会にて質問に立ち、以下について自見大臣始め政府の見解を質しました。
1.カスタマーハラスメント対策について
2.食品ロス対策について
3.エシカル消費について
4.マルチ商法について
質疑の概要を勝目事務所においてまとめました。長文につき恐縮ですが掲載いたします。 なお、正確なやりとりについては、議事録をご覧下さい。
【勝目】
大臣は、消費者と事業者が連携して豊かな消費社会をつくり上げることも重要な課題だと述べておられるが、私も大いに賛同する。そのためには、消費者自身が果たすべき役割と責任がある。このことを通奏する問題意識としてお伺いしたい。
1.カスタマーハラスメント対策について
【勝目】
我が国の消費者法制は、伝統的に、情報の量や質、資本力、交渉力などの事業者と消費者の格差に着目して、契約自由の原則の例外として消費者保護を図ってきた。
今年の7月に取りまとめられた有識者懇談会における議論の整理においては、これだけでは不十分で、高齢者や若者といった消費者の脆弱性そのものを正面から捉えて、消費者法制を抜本的に見直すべきという問題意識が示されている。
消費者の脆弱性につけ込むような事業者の営業姿勢は、我が国の健全な消費者市民社会の形成を阻害するもので許されない。この規制の在り方として、個別的・具体的な規制にするのか、一般的・包括的な規制にするのかというのは、これまでも論点になってきたところであり、難しい課題ではあるが、この間の議論の積み重ねを踏まえて制度の充実を望みたい。
他方で、近年、消費者側の過剰な苦情や不当な要求、不適切な行動など、いわゆるカスタマーハラスメントが大きな問題になっている。こうした苦情や要求に対応させられる事業者側の現場の職員は、疲弊をして、場合によっては、個人としての尊厳を傷つけられ、ブラック職場として離職を余儀なくされる。事業者サイドからすると、大変な人手不足に拍車がかかることすら懸念をされる、大きな問題である。
このような消費者の言動の背景として、「お客様は神様」という言葉が曲解されて人口に膾炙し過ぎているのではないか。
御参考までに、この言葉を言ったとされる三波春夫さんのオフィシャルサイトによると、生前、三波さんはインタビューに答えて、「歌う時に私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな、澄み切った心にならなければ完璧な芸をお見せすることはできないと思っております。ですから、お客様を神様とみて、歌を唄うのです。」と言っていたそうだ。これはつまり、全身全霊で客と向き合うべしという、プロフェッショナルとしての、芸を披露するに当たっての心構えを説かれたものだということである。
一般に世間で捉えられているイメージとは実は随分違う意味なのではないかと思う。お客様というのは、あくまで事業者と消費者間の契約の一方当事者であって、事業者の側でも、何をされても我慢しなければならないということでは決してないということだ。
いわゆるカスタマーハラスメントは、ここに来てようやく、各分野で対策が取られるようになってきた。例えば、今年の通常国会で改正された旅館業法においては、いわゆる迷惑客に対して宿泊拒否を可能とする法改正が行われ、来月、12月13日から施行される。
介護における利用者やその家族による身体的、精神的暴力や様々なハラスメントについては、厚生労働省の方から対策マニュアルが作成されている。
教育現場においては、これはカスハラとは意味合いが異なるが、いわゆるモンスターペアレント問題については、対応事例の情報共有が行われており、また、我が党の令和の教育人材確保実現プランにおいても、学校任せ、教師任せにするのではなくて、行政が対応を引き受ける仕組みを検討すべき、と提言している。
こうした中で、今年3月に閣議決定された消費者教育の推進に関する基本的な方針の中で、消費者教育の意義として、「消費者自身が「加害者」となってしまう例もみられる中、消費者教育の重要性は高まっているといえる。」という記述がある。これは先ほど例を挙げた動きと呼応するものと評価できるが、包括的な消費者政策の方向性としてカスハラ対策が明確に打ち出されているとはまだ言い難いという印象を持っている。先述の有識者懇談会の議論の整理の中では、実は、カスハラ対策について全く言及がない。
消費者庁として、カスタマーハラスメントについてどういう認識を持たれて対処しようとされているのか、大臣の方針をお聞かせいただきたい。
【自見国務大臣】
消費者が事業者に適切に意見を伝えることは、消費者の提供する商品やサービスの改善を促すことにもつながるものであり、消費者市民社会の形成を目指す消費者教育の理念に沿ったもの。
一方で、著しい言動や土下座の強要などの行き過ぎた言動は、犯罪行為を構成する場合もある。このため、消費者庁では、事業者に配慮した適切な意見の伝え方について、消費者向けの啓発チラシ等を作成し、SNSやホームページを通じて情報発信するなどの取組を行ってきた。
また、委員からも今問題意識、御披露いただいたが、私どもとしても、消費者市民社会の形成というものに当たっては、消費者と事業者が従来の取引等において相対する関係から、公正かつ持続可能な社会の形成に向けて双方向のコミュニケーションをしっかりと深化させていくということ、また、共創や協働するパートナーとしての関係を高めていくということが非常に重要であると考えている。本年三月に変更の閣議決定した消費者教育推進基本方針においては、新たに消費者と事業者との連携また協働について盛り込むなどの拡充を図ったところ。
委員からの後押しも受け、消費者が従来の保護される脆弱な立場、存在としてだけではなく、消費者が自立した責任のある行動を通して社会的な役割をしっかりと果たしていくことができるように、消費者教育の取組を一層進めてまいりたい。しっかり問題意識を受けて頑張っていく。
【勝目】
大臣が仰ったように、事業者と消費者というものを相対するものとして捉えるだけでは、やはり社会を構成していくことにはつながらない。公共の場をどうやってつくっていくのかという視点も大事であるし、その中では、やはり、消費者として果たすべき責任、行き過ぎた要求は犯罪行為を構成するケースもあれば、権利の濫用、民事上の責任を問われることも大いにあり得ることをしっかり消費者サイドにもお伝えしていくことも、消費者教育の中で大変重要なパーツであると考える。間違った意味での「お客様は神様」だという認識を社会から一掃したいので、どうぞよろしくお願いしたい。
2.食品ロス対策について
【勝目】
まだ食べられるのに廃棄をされる食品ロス、その量、直近で523万トン。世界の食料支援量の1.2倍という規模。国内でもこどもの貧困が大きな社会的課題となって、こども食堂などを通じた支援が拡大している足下でこれだけの食品が廃棄されているというのは、大きな矛盾を感じざるを得ない。
他方、食品ロスがこっちにあって、別のところに食品のニーズがあるということでマッチングをしようとしても、賞味期限等との関係から加工食品が中心とならざるを得ない、という現実もあると聞くところ。例えば、カップ麺とかスナック菓子とかばかりがこども食堂に提供されても、これはこれで別のミスマッチが生じることになる。食品衛生上の課題もあり、丁寧にこれら論点を解きほぐしていかないといけない。
食品ロスについては、2030年のロス量を2000年比半減、980万トンから489万トンへと減少させる目標が立てられている。大臣は、この目標の達成に向けて、関係省庁等と連携をし、食品の寄附等を促進するための措置を含む施策パッケージを年末までに策定すると述べられた。
10月13日に中間報告が取りまとめられているが、ここでは、①食品の提供、②賞味期限の設定、③フードバンクの体制強化、そして、④外食時の食べ残しの持ち帰りなど、論点が網羅的に示されている。この対応をパッケージ化しようということだと思う。
そこで、これらの論点それぞれの具体的な方向性哉検討スケジュールについて、方針をお聞かせいただきたい。
【消費者庁審議官】
年末までに策定する予定の食品ロス削減に係る施策パッケージについては、政府検討の場として、消費者及び食品安全担当大臣が会長を務めます食品ロス削減推進会議を活用することとしている。
本年7月には、同会議の閣僚委員として民事基本法制を所管する法務大臣やこども政策担当大臣を総理から追加指名いただいて、食品関連事業者、フードバンク、こども食堂など、各方面の有識者の意見をお聞きしながら検討を進めているところ。
去る10月13日に同会議を開催し、施策パッケージ検討の中間報告を行うとともに、特に、食品寄附や食べ残しの持ち帰りに係る法的責任の在り方については、今後の検討を進めていく上での論点を事務局からお示しし、確認されたところ。
まず、食品の提供に係る法的責任の関係であるが、例えば、アメリカのように善意の食品提供について一律に民事、刑事上の法的責任を問わないとする制度は、寄附促進には有効かもしれないが、このような制度を日本にいきなり導入すると、関係事業者による食品管理等に係るモラルハザードが引き起こされ、結果として寄附が進まない可能性がある。むしろ、関係する事業者同士の信頼関係や最終受益者からの信頼性を高める枠組みを検討する必要があるのではないか。
また、賞味期限の在り方については、平成17年に厚生労働省及び農林水産省が策定した食品期限表示設定のためのガイドラインで今現在の秩序ができているが、来年度、消費者庁が中心になり、期限表示の設定の根拠や、いわゆる安全係数の設定等の実態調査を通じ、課題等を整理してまいりたい。
また、フードバンク団体の体制強化については、農林水産省が中心となり、フードバンクが寄附食品を受け入れ、又はこども食堂へ提供するために輸配送費や倉庫、車両等の賃借料の支援を行うとともに、企業とフードバンクとのマッチングやネットワーク強化の推進を行う。
また、外食時の食べ残し持ち帰りのルール整備あるいは促進については、食べ残しの持ち帰りにおける法的取扱いや食品衛生に係るガイドラインを整備し、事業者・消費者双方の持ち帰りに対する意識の変化に役立てていくべきではないか、こういった点が指摘されている。
これらの検討事項については、年末までに施策パッケージとして取りまとめるべく、関係省庁全体で検討を加速化させてまいりたい。
また、その後のスケジュール感であるが、施策パッケージに盛り込まれた施策を着実に実行に移すとともに、令和元年度末に閣議決定されました食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針の見直しの検討に着手してまいりたい。
【勝目】
年末までにそれぞれの論点についてスケジュールがセットされるというよりは、その後検討を進め結論を得るということだと思うが、早く結論を出していただきたい。
3.エシカル消費について
【勝目】
エシカル消費とは、一般には、社会、地域、環境、人に配慮した消費行動ということで、消費者庁さんもこの十年程度取り組んでおられるが、「エシカル消費」という言葉の認知を高めよう、こういうKPIを設定してしまっている。英語圏の人がエシカルコンサンプションという言葉を認識するのと、日本人が聞いたことのない横文字を認識するというのは、これは全然意味合いが違う。言葉そのものを知られるのが大事なのではなく、そこに込められている中身、サブスタンスが広がっていくことが大事。
このエシカル消費の中身というのは、地産地消であるとか、伝統工芸品であるとか、もったいないという精神であるとか、あるいは着物を世代を超えてつないでいくであるとか、農福連携商品を買うとか、我々が結構日常やっていること、意識していることが多い。こういうアクションをしっかり促していく施策こそが重要。
エシカル消費について、これまでの取組の成果、あるいは今後の方針をお聞かせいただきたい。
【消費者庁政策立案総括審議官】
消費者市民社会の構築に向け、消費者が社会課題を自分事として捉え、課題解決に取り組むことは、今後ますます重要。
消費者庁においては、エシカル消費について、学校向け教材の作成や、啓発資材の作成、貸与のほか、特設サイトやSNSによる優れた取組の普及啓発を行ってきた。
この結果、令和5年度、第4回消費生活意識調査によると、エシカル消費という言葉の認知度は29%であるが、75%の消費者が、マイバッグ、マイ箸、マイカップなどの利用など、何らかの行動を実践していた。
消費者庁においては、各年代のニーズに応じたエシカル消費などの啓発や情報発信の強化、事業主との協働に更に取り組んでまいりたい。
【勝目】
今ほど御答弁あったように、認知度とやっていることの間にそれだけのギャップがある。エシカル消費の中身の促進を是非お願いしたい。
4.マルチ商法について
最後に、マルチ商法について要望したい。私の友人の家族もマルチにはまってしまい、大変な思いをしている。人間関係を使っての行為なので、非常に解決が難しい問題。しっかり厳正に法律を適用していただいて、また、そのための体制を消費者庁さんにおいて十分取っていただくことをお願いする。
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