5月10日、衆議院 法務委員会厚生労働委員会 連合審査会にて質問に立ち、出入国管理及び難民認定法改正案について政府の見解を質しました。
質疑の概要を勝目事務所においてまとめましたので、長文につき恐縮ですが、掲載いたします。なお、正確なやりとりについては、議事録をご覧下さい。
Ⅰ 在留外国人と社会保険料の支払いについて
【勝目】
まず、在留外国人と社会保険についてお伺いする。
一昨日、法務省は、永住許可申請者のサンプル調査の結果として、審査を終えた1,800件余のうち、12.8%に相当する235件、公租公課の未納があったと公表された。ほとんどは国民年金保険料の未納とのことである。日本の年金は賦課方式であり、永住許可を得ようとするのであれば、やはりこれはお支払いいただきたいというのが率直なところである。
今般の法改正では、永住許可の要件として、公租公課の支払いを追加するとともに、在留資格の取消事由として、故意により公租公課の支払いをしないことが明記された。永住を許可するに当たっては、租税はもとより、やはり社会保険料の納付を通じて日本社会の安定を確保するために不可欠な社会保障を支えていただくことを要件とするのは、分断を心配する国民の皆様の納得感につながると考えられる。
また、任意規定ではあるが、在留カードとマイナンバーカードの一体化も図られる。現在進めているマイナンバーカードと保険証の一体化とも相まって、不法滞在者も含めて、外国人の保険証の成り済ましなどの不正利用の抑止と、そのことに伴って保険料の適正納付の促進、こうしたものが期待されるのではないかと考えるところ。
厚労省として、在留外国人の皆さんにも我が国の基盤である社会保障をお支えいただくことを進めるために、今申し上げた点に関し、どのように取り組んでいかれるのか、お聞かせいただきたい。
【厚生労働省保険局長】
今御紹介いただいたように、今般の永住許可の適正化は、永住許可要件に公租公課の支払いが含まれることを明確にするとともに、故意に支払わない場合には永住者の在留資格を取り消すことができるという規定が設けられる。
こうしたことは、社会保険を運営していく意味では非常に重要なことだと考えており、厚生労働省としては、まずは、永住者等の方も含めまして、保険料納付の勧奨、相談の取組を引き続きしっかり運用いただくよう、各保険者に周知徹底してまいりたい。
また、現行の保険証は、券面には氏名、生年月日、性別は記載されているが、顔写真がなく、医療機関を受診する際に資格確認において成り済ましのリスクがあるとかねてから指摘されている。
現行の保険証については、今年12月2日に終了し、永住者の方を含め、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行する。マイナ保険証については、オンライン資格確認を実施することにより、顔写真を用いて顔認証を行ったり、あるいは4桁の暗証番号を入力する、こうした措置が講じられることになるので、成り済ましを防ぎ、電子的かつ確実な本人確認を行うことが可能と考えている。
マイナ保険証へ移行することについては、永住者の方を含め、周知広報の取組を行って、この利用促進を積極的に取り組んでいきたいと考えている。
【勝目】
しっかりやっていただくようお願いする。
Ⅱ 技能実習制度の廃止と育成就労制度の導入について
【勝目】
まず、この両制度における労働者保護についてであるが、技能実習生は、平成21年度の改正によって労働者として位置づけられ、労働法制の適用を受けることになった。そして、平成28年改正で技能実習法が制定された。この21年改正によって、実習生と称しつつ実質的には労働力として活用されていたという実態を踏まえた法整備がされたが、転籍制限があることで、なお弱い立場に置かれて、そのことが技能実習生に対する人権侵害を誘発していると指摘をされてきた。
失踪者も、直近ではもう1万人近くということであり、その要因は様々だとは思うが、やはり労働者保護が実態として十分ではなかったのではないか、そのことが表出したのではないか、こう考えられるところである。
まず、この21年改正によって、技能実習生の就労環境はどの程度改善されたのか、失踪者の推移も踏まえて、政府としての認識をまず伺いたい。
【厚生労働省人材開発統括官】
技能実習制度は、平成5年に制度を開始し、これまでも問題事案の発生など指摘を受けてきたが、御指摘の平成22年施行の改正入管法により、従来、1年目は研修という在留資格で、労働者としての労働法令の適用を行っていなかったが、これを1年目から原則労働関係法令の保護が及ぶようにした。このことによって、例えば、1年目から給料の不払い等が行われたときに、労働保護法令の適用がなされるようになった。
失踪者の推移については、御指摘のような規模で、約9千人の失踪者が直近発生しているところであるが、一方で、こういうことで安心するということではないが、在留資格管理制度の一つとして見た場合に、失踪率は比較的低く運営できていると国際的には指摘されている。
こういった点も念頭に置きながら、引き続き、この技能実習制度、それから新しい育成就労制度がしっかりした役割を果たしていけるようにしていきたい。
【勝目】
分母が増えた中では、ということなんだろうと思うが、どういう形でどの程度改善されたのかということを把握するのは、今回育成就労を入れた中でどうなのか、ということをまた問われると思うので、是非実態把握にも努めていただきたい。
この育成就労制度の新設により、今回の制度の中で労働者保護の観点から何か新しい措置というのはあるのか伺いたい。育成就労が技能実習よりも就労環境が改善されるという根拠、メカニズムについて教えていただきたい。
【厚生労働省人材開発統括官】
まず、本法案において、育成就労計画を認定する仕組みとしているが、この中で、育成就労外国人に対する報酬の額が日本人が当該業務に従事する場合の報酬の額と同等以上であることその他育成就労外国人の待遇が主務省令で定める基準に適合していること、という要件を設け、育成就労外国人の待遇の確保を図ることとしている。
また、今回の見直しにおいて、転籍に関し、あらかじめ示されていた労働条件と実態に一定の相違があった場合など、やむを得ない事情がある場合の転籍の範囲を従来よりも明確化し、また範囲を拡大し、手続についても柔軟化を図ってまいりたい。
さらに、就労期間など一定の要件を満たした場合には、本人の意向による転籍も認め、かつ、就労期間の制限が1年を超える分野では、昇給その他待遇の向上等を図るための仕組みも併せて盛り込んでいくということを考えており、これらの措置によって、育成就労外国人の待遇向上や労働関係法令の遵守をこれまで以上に図ってまいりたい。
【勝目】
これまでも言われていることであるが、やはり、転籍がしっかり機能して、育成就労外国人が一定のバーゲニングパワーを持てるようにすることで、人権侵害を防ぐというのがメカニズムの基本。それに加え、給与面での規定もあるということなんだと思う。
では、この転籍をいかに実効性を持たせるか。機構の体制が非常に重要になってくる。今、監理支援機関、現行の監理団体は3千超ある。このほとんどが監理支援機関になりたいということで、許可の申請をまとめて持ってくるということになる。
許可申請の審査を形骸化をさせずにその実質を見極めていかないといけないということがまずあって、そして、法制度が施行された後は、当然モニタリングにも実効性を持たせないといけないということで、やはり機構に必要な体制が備わっているかということが問われる。
監理団体も、新たな基準にのっとって、質を高めて、そして監理支援機関として申請をしていただかないといけないわけであり、これは国として、あるいは機構としてそうしたことを促していかないといけないということである。
つまり、この法案は、施行は3年後ということになっているが、それより前の準備段階から、いかに準備を整えて、体制を整えて、そして現場とコミュニケーションをとってその意向を伝えていくか、というところからもう勝負は始まっていると思っている。
今、機構の定数は5百人ぐらい、派遣の方を入れればもっといるかもしれないが、想定される監理支援機関の数も念頭に、体制整備の方針、方向性を伺いたい。
【厚生労働省人材開発統括官】
育成就労制度の適正運営のためにも、監理支援機関の質の向上、また、許可後の適切な指導監督が重要という御指摘と受け止めており、監理支援機関については、改正法がなされた場合には、新しい基準に基づいて許可を取っていただかないと新法に基づく育成就労に関する監理支援業務はできないという仕組みとしているところであり、その許可申請を施行までの間に準備期間を設けてきちっと処理をしていくということがまずは機構の重要な役割の一つとなる。
また、当然のことながら、許可された後の監理支援機関の業務遂行についても、しっかりしたチェックを行うことを機構、労働基準監督署や地方出入国在留管理局との連携なども含め的確に行っていくこともまた新しい機構の重要な役割となってくる。それに必要な体制については、法案成立をいただいたならば具体的な詰めを行い、必要な体制の整備はきちんと図ってまいりたい。
【勝目】
体制整備については、やはり必要な予算を取っていくことが極めて重要。我々与党としてしっかり後押しをしていきたい。
また、転籍に当たっては、外国人のニーズあるいは能力と、新たな育成就労実施者側のニーズとのマッチングをしっかりやっていかないといけない。一義的には監理支援機関が行うということであるが、そこを超える転籍については、これも機構が人材派遣紹介業を新たに行うことになる。また、支援機関のモニタリングもしないといけないが、これもまた人材紹介のノウハウが機構にないといけない。
したがってまず、機構の人材紹介の面での体制整備、人材育成について、ハローワークとの連携の在り方も含めてお伺いをしたい。あわせて、今回、民間の紹介事業者というのは、当分の間、排除する方針となっている。悪質なブローカーを排除するのは分かるが、マッチングの機会をより広げるという意味では、民間の力を使っていくということも一つ方向性としてはあり得るのではないか。悪質なブローカーを排除しながら民間の力を生かすという意味で、今の当分の間の取扱いというのはいつまで続けるつもりなのか、お聞かせいただきたい。
【厚生労働省人材開発統括官】
まず、機構の職業紹介業務に関しては、育成就労制度においては、外国人育成就労機構が有する情報を活用しつつ支援することにより円滑に転籍が進むよう、監理支援機関のみならず機構でも職業紹介業務を行える形にしている。この点については、受入企業の一覧などの情報を機構からハローワークに提供するといった情報連携を行うことも含めて、ハローワークにおける円滑な職業紹介とセットで進めていきたい。
また、機構に関しては、新しい役割になるので、これを着実に果たすことができるよう、厚生労働省や出入国在留管理庁との人材交流、職業紹介に関するノウハウの共有なども含め、どのようなやり方で必要な体制整備を図っていくべきか、しっかり検討してまいりたい。
また、民間職業紹介事業者の扱いであるが、御指摘のとおり、今回、転籍に関する新たなルールを育成就労制度に関して設ける中で、過度な引き抜き防止などの観点から、当分の間、民間職業紹介事業者の関与を認めないルールを考えている。
今後については、転籍の新しいルール、本人意向による転籍の制限期間について、当分の間、受入れ分野ごとに一年から二年までの範囲内で設定をするという新しいルールそのものが当分の間の措置であり、新制度を運用してみて様々な観点から施行状況を検討するといった中で、その先のことを検討してまいりたい。具体的に何年後ということではなく、まさに当分の間と今のところ考えている。
【勝目】
体制整備の方は人材紹介の方でもしっかりやっていただきたい。
あわせて事業者側の不安、転籍を通じてどんどん大都会や大企業、大手の方に流れてしまうことがないように、過剰な引き抜きを防止をして定着を促すような仕組み、これもしっかりと導入をしていただきたいいただきたい。
これらは全部ミクロの話であるが、マクロ経済政策との接続、整合性というのも図らないといけない。
育成就労制度を導入することで、かえって日本人の労働者の賃金の抑制の要因になってしまうのではないか、下押しの圧力になるんじゃないか、こういう御懸念、心配もある。賃上げをしっかり図り、デフレから脱却し、そして持続的、安定的な経済成長につなげるという観点で、こうした懸念に対してどのように応えるか。
【厚生労働省人材開発統括官】
御指摘のとおり、外国人労働者の受入れ制度を検討するに当たり、国内労働市場への影響というのは非常に重要な論点の一つ。
育成就労制度においては、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材確保をすることが困難な特定産業分野に限って受入れを行うこととしており、また、人手不足の状況などを適切に把握した上で受入れ見込み数を設定する、必要に応じて国内の経済環境の急激な変化などがあった場合に臨機に受入れの停止措置を講ずることもできるような仕組みを設けることとしており、これらを通じ国内の雇用安定に影響を与えないということもしっかり見てまいりたい。
【勝目】
これまでミクロ、マクロ両面で質問してきたが、最後に大臣にお伺いしたい。
この法律は、法務省と厚労省の完全な共管になっている。役所によくあるのが、何か事案が起こったときに、お見合いをして、ポテンヒットが落ちる。こうなってはいけない。法律だけではなく、実際の運用も一体的に行っていかなければならない。御決意を伺いたい。
【武見厚生労働大臣】
近年の我が国の労働力不足の深刻化と国際的な人材獲得競争の激化は極めて激しい。現行の技能実習制度で指摘されている制度目的と運用実態の乖離ははっきりしており、人権保護などの観点からの課題もある。これらを解消することで、外国人にとって魅力ある制度を構築し、長期にわたって我が国の産業を支える人材を確保することを目的とした本改正になっている。
御指摘のとおり、本法案が成立した場合には、今回の見直しを実効あるものとすることが重要であることから、厚生労働省としても、外国人の労働者としての権利の保護や人材の育成、保護が適切に図られるよう、ハローワークや労働基準監督署等も関与しながら、出入国在留管理庁と緊密に連携をして、適正な運用にしっかり取り組んでいきたい。
Comments